大学の軽音部でPAやってみた③
- EN-LAB.
- 4月2日
- 読了時間: 7分
その③ ライブ本番編
さて、前回EN-LAB.で音響セッティング案を固めました。
あとはライブに挑むだけです。
ライブ前日に学生たちがライブ会場の設営をするとの情報が入ってきました。
我々は事前にセッティング図と配線表を送り「配線だけは当日の朝にやるのでおいといてください」と伝えました。
ライブ会場には9:30くらいに入って10:30から本番がスタートする予定です。
本当なら前夜は早く寝て早朝から現場に向かいたいところでしたが、あいにく夜遅くまでEN-LAB.で貸切パーティーの予約があり、仕方なく勤務後に大学から近いホテルで前泊することに。
ホテルへと電車で向かう最中に学生さんから連絡が。
連絡① JC120は2台(ギター用とキーボード用)使ったら電源落ちしないか心配です
→120wくらいなんで1台増えてもたぶん問題ないでしょう
連絡② コーラスマイクトラックはもう1本、できたらもう2本ほしい
→バンドセッティング次第で必要ないチャンネルを活用すればいけると思います
連絡③ ミキサーに繋ぐBGM再生端末は必要ないかもです
→音響セッティングの確認時に何かと重宝するので一応準備しましょう
連絡④ 配線を配線図を見ながら自分たちでやってみました
→少し不安ですが明日の朝にチェックします
連絡⑤ハイタムとロータム用マイクをひとつにして、でできた余裕をKeyの2台目チャンネルにしてJCではなく従来のようにDIからミキサーに飛ばすようにしました
→JC120を使ってMIXする案についてもう少し詳しく説明して推せばよかった
連絡⑥バンドによってはオーバーヘッドのLの位置をずらしてコーラス用に使うことがあります
→なんとか工夫してその方法以外でコーラスチャンネルを確保しましょう
連絡⑦ Dr用の返しと片方のサブウーファーから音が出ません
→明日の朝に配線とセッティング見たら多分すぐに解決するでしょう
連絡⑧ メインのマイクに静電気のようなものが発生します
→これは原因を消去法で色々試すしかなさそうです
あと明日の朝なんですけど、7時半に駅ぐらいに変更でも大丈夫ですか?
→(@ ̄□ ̄@;)!!まじですか!!?
真面目で素直な我々は翌朝6:00過ぎに起床し、ホテルの朝食ビュッフェで腹パンになるまで詰め込んで今日の戦場へと向かいます。
再びやってきたS大学。
緊張感がほとばしります。
ライブ会場は部室の横にある建物の2階の集会所。
キャパ150名以上ありそうなイイ感じの現場です。

ただし反響がほとんどないデッドな空間。
メリットとデメリットが両極端にありそうな予感。
我々が到着したころには設営に係る部員のみなさんが朝早くから集まっていました。
みなさん、朝早くからご苦労様です。
まずは配線チェックから。
おお、意外とちゃんと配線してある。
やりますねS大学軽音部PA担当のみなさん。
ただメインスピーカー用に指定したパワーアンプQ1212が返し用になっていて、メイン用にはP3500sがあてがわれていました。


パワー、音質、機能などの面でこの配置にも意味があったのですが、事前に真意を伝えきれなかった我々の責任です。
しかし今から配線をやりなおしてリハに間に合わないリスクを考えればこのままのセッティングでいくことに。
つぎのチェックは鳴らないドラム用モニターとサブウーファー。

まずはドラム用モニターに接続してあるスピコンをケーブルチェッカーで調べてみると案の定、断線していることが判明。こんな事態を予測してEN-LAB.から持参したスピコンに繋ぎかえたら無事に音が出ました。

鳴らないサブウーファーはパワーアンプの設定をチェック。
メインミキサーからモノ出力したXRLがパワーアンプのAチャンネルにインプットされています。
ここまではOKですが、アンプのモードがステレオになっていました。
これではAチャンネル、つまり片方のサブウーファーからしか音は出ません。
モードをパラレルに切り替えれば無事にAB両方のサブウーファーから音が出ました。

本番まで時間が迫ってきているので急ぎます。
続いてはメインスピーカーのセッティング&チューニング。
いつもどれくらいの音量でやっているのかを学生さんに確認しながら微調整していきます。
次に返しモニターのセッティング&チューニング。
ここでプチトラブル。
ステージ下手の返しモニターにBGMの信号を送ると同時にドラムモニターにも信号がいってしまいます。

原因は返しモニターのグライコとして使おうとしていたマルチエフェクターFX2000にありました。先程のサブウーファー用のパワーアンプの逆でパラレル設定になっていたのですが、このマシンは背面にデュアル/パラレルの切り替えスイッチが無く、小さなディスプレイを見ながら小さなボタンで操作して切り替えるタイプだったので気付くのに10分くらいのタイムロスをしてしまいました。本番が迫るのであせります。
設定修正はできたもののFX2000を通したら音質劣化が著しく結果的にこのマシンは使用しないという決断をくだしました。ライブ時間が迫る音響現場では迷いが生じるくらいなら諦めて確実な方を選択するのが正解だと思います。
努力の末、なんだかんだで外音も返しもいい感じに仕上がりました。
最後の課題はマイクから電気が来てビリビリする問題解決に挑みます。

これはいわゆるGND浮きの状態だったと思われます。
対策としては色々と考えられるのですが改善に必要なツールと十分な時間がないのと人によってはビリビリ来ないという理由でそのままで強行しました。
おもにJC-120を使うギタボの人にビリビリくる傾向があったみたいなので、ギターシールドにDIをかます方法でいこうかと思いましたが予備のDIがなかったのも残念なところでした。
そして、いよいよライブ本番がはじまりました。
使い慣れないアナログミキサーと格闘を始めるEN-LAB.PAスタッフ。
アウトボードのコンプ、ゲート、リバーブを巧みに操っていきます。

外音はボーカル、ギター、ベース、ドラム、キーボードが案外しっかり聴こえます。
ステージ後方に回って返しモニターをチェックしてみましたが素晴らしく良好なサウンド。
タイムテーブルが進むにつれ細かい改善ポイントも明確になり更に音が進化していきます。
巷のライブハウスに近い域のしっかりした音響が組みあがってきました。
と、ここでトラブル発生。
ドラムのキックから信号がきません。
ライブ中なのでチェックのためステージに上がるわけにもいかず、まずはマルチボックスからミキサーへとつながるキックのXLRを確認→問題なし。
つぎに転換時間にキック用マイクATM25を確認にいくと、なんとマイクの根元のネジが緩みグラグラの状態になっていました。
仕方なくATM25を取り外し代替品の格下マイクに付け替えたのですが、当然、先ほどまでのキックの音と比較したら聴き劣りしてしまいます。これは勿体なかった。
さらにトラブルは続きます。
なんとなくドラムのタムの音に締まりがないように感じていたらPAスタッフがタムボトムのテンションボルトが一本なくなっているのを発見しました。
まじですか!時間的問題でこれはもう無視して進行してもらいます。
そして最後のトラブルが。
吹かれがやたら大きいマイクを発見したのでグリルを外して中を確認してみるとポップガードがグチャグチャになったまま突っ込んでありました。念のため全マイクをチェックすると中にはポップガード自体が入っていないものまで。
これはすぐに対応できるのでPA担当の部員さん達にその場で伝えました。
以上これらのトラブルは全て日頃のメンテナンスを疎かにしたことと事前の機材チェックの甘さが招いた事故でした。今回数あるの反省点のうちの重要なひとつです。

その他は致命的なトラブルもなくライブは順調に進行し、17:30頃トリのバンドまで無事に整ったサウウンドで終えることができました。
ちなみに私はトラブルシュータ―として同行したのでセッティングの時と上記のトラブル時以外はほとんど何もしていません。PAスタッフが寝不足と戦いながら根性と気合でオペレーションしてくれました。
ライブが終わったあと部員の方々から
「いつもとちがっていい音でした」
「返しもよく聴こえました」
などの声が。
本当に来た甲斐があったな。
こちらも勉強させていただきましたので大感謝です。
今回は比較的に良い機材と良い会場という条件が揃っていたケースだったので難易度は低めだったように思います。
次はもっと厳しい条件での現場に挑みたいなと考えていますので、是非みなさんからのご依頼をお待ちしております!
以上、「大学の軽音部でPAやってみた」でした。
最後まで読んでくださりありがとうございました!
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