ライブハウスEN-LAB.の堀です。
私がまだ一人のイベンターとして「イベントが盛り上がりづらい」ことで有名な京都という荒野を駆けずり回り孤軍奮闘していたころ、主催イベントに付加価値を付ける目的で"ライブフォトグラファー"を募集したことがあった。
私の主催ライブに出演すれば"ライブフォトグラファー"達がカッコイイ写真をたくさん撮ってくれるという当時としては画期的アイデアだった。
有難いことにネットの募集記事をみて、数多くのカメラマンたちが集まってくれると同時に素晴らしいライブ写真がどんどん増えていき出演者からは大好評だった。
なかでも個人的に好きだったライブフォトグラファーにRIKIくんという人がいて、彼の写真は冷たさの中に僅かな暖かさと生命の静かなる躍動感の余韻を感じるというか、いわばドライフラワーみたいな作品を撮る男だった。
そんな彼もどんどんフォトグラファーとしての活動を活発化させ、いまやプロとして活躍している。
彼が忙しくなるにつれ、私のイベントに参加してくれる機会も減り「彼の代わりに私好みの写真を撮ってくれるライブフォトグラファーはいないだろうか」と考えていたとき、ある運命の出会いを果たす。
京都・木屋町のクラブChambersで主催したライブに、他の方々と同じようにネットの募集記事をみて来てくれた新しいカメラマン、彼の名を美影さんといった。
カメラマンのイメージとして、カメラを触っている時以外は寡黙で内向的な人が多いと感じていた私は、その日現れた美影さんに小さなショックを受けた。
とても気さくな彼は、カメラを構えていない時でもアーティストという存在に一切臆さず、屈託のない笑顔で積極的にコミュニケーションを取りにいくという今まで見たことのないタイプのカメラマンだった。
しかし、ライブ中は一転して鬼気迫る真剣な眼差しと軽やかなステップで激写する姿が非常に印象的だった。
イベントが終わり打ち上げにも参加してくれた美影さん。
夜も更け遠方から来てくれた出演アーティスト達が続々と帰っていく中、最後まで居残り交流を続ける美影さん。彼もまあまあ遠方から来てくれているのに。
そんな姿をみて「ああ、この人は本当にライブが好きなんだな」と心底感心したのを憶えている。
イベント終了から数日後、美影さんからライブフォトのデータが届く。
それをPCで開いた瞬間、衝撃が走った。
「なんだコイツの写真超ヤベぇ!!」
そこにはライブの躍動感がおそろしいくらい高濃度で凝縮されていた。
人間の目では決して捉えきれない瞬間たちが美しくデフォルメされた画像たちに思わず息をのんだ。
ライブの写真というのは相当難易度が高いと思う。すごく素敵な風景写真を撮るフォトグラファーでもライブ写真だけはなぜかイマイチという事例を数多く見てきた。
心からそのライブ、そのアーティスト達を愛していないと美しくは撮れないのではないだろうかと美影さんという人と写真をみて思ったのだ。
月日は流れ、私はイベンターからライブハウス経営者へとステップアップした。
そしてなんと、その美影さんが今度はイベント主催者として、彼女さんと一緒にShaRonという主催ライブをEN-LAB.で打ってくれることになったのだ。
ああ、なんという運命。
ともに成長しあえる素晴らしき関係。
最近ではうちのスタッフに懇願され、そのスタッフのアー写も撮ってくれるらしい美影さん。
人と人との出会いは、本当に大事にしなきゃなと改めて思わせてくれた。
彼が以前、私のイベントを写真でサポートしてくれたように、今度は私が全力で彼のイベントをサポートする。
彼のイベントはきっとアーティスト愛に溢れた素晴らしいものになるだろう。
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